
「私たち親が亡くなった後、この子は大丈夫だろうか。」
障害のあるお子さまをお持ちの親御さまから、このようなご相談をいただくことがあります。
現在は親が生活を支え、預貯金を管理し、病院や福祉施設とのやり取りをしている。
しかし、親もいつまでも元気でいられるわけではありません。
特に新潟県では、親世代の高齢化が進む中、「親亡き後」の生活や財産管理について、早めに準備しておきたいというご相談が増えています。
そこで今回は、障害のあるお子さまの「親亡き後問題」について、家族信託を活用した財産管理という観点から、司法書士の立場でわかりやすく解説します。
「親亡き後問題」とは?
「親亡き後問題」とは、障害のある子どもを支えてきた親が亡くなったり、高齢や病気などによって支援できなくなったりした後に生じるさまざまな問題のことです。
例えば、
- 誰が生活を支えるのか
- 誰が預貯金を管理するのか
- 生活費をどのように確保するのか
- 自宅や賃貸不動産をどうするのか
- 誰が重要な契約や手続きをするのか
- 親が残した財産をどのように管理するのか
などです。
親御さまが元気なうちは、こうした問題をあまり意識しないかもしれません。
しかし、
「自分が突然倒れてしまったら?」
「夫婦二人とも亡くなったら?」
と考えると、不安を感じる方は少なくありません。
大切なのは、親が元気なうちに準備を始めることです。
障害のある子どもに財産を残せば安心?
「子どものために、できるだけ多くの財産を残してあげたい。」
これは多くの親御さまが考えることだと思います。
しかし、「財産を残すこと」と「財産を適切に管理してもらうこと」は別の問題です。
例えば、親が亡くなり、障害のある子どもがまとまった財産を相続したとします。
その後、
「その財産を誰が管理するのか」
という問題が生じる可能性があります。
また、相続によって財産が子どもの名義になったからといって、その財産を親が希望した方法で将来にわたって使えるとは限りません。
そこで重要になるのが、
「どれだけ財産を残すか」だけではなく、「残した財産を誰が、どのように管理するのか」まで考えておくこと
です。
家族信託とは?
家族信託とは、財産を信頼できる家族に託し、あらかじめ決めた目的に従って、その財産を管理・運用してもらう仕組みです。
例えば、
- 父親・母親=委託者
- 信頼できる子や親族=受託者
- 父親。母親=受益者
父親・母親が亡くなった後の受益者を障害のある子
という形で信託を設計することが考えられます。
親が所有している預貯金や不動産などの財産の全部または一部を信託財産とし、受託者が管理します。
そして、親が亡くなった後も、信託契約で定めた内容に従って財産を管理・給付していくことを検討できます。
つまり、
「親が元気なうちに、親亡き後の財産管理の仕組みを作っておく」
という考え方です。
新潟でも家族信託を検討するご家庭が増えています
新潟市をはじめ、新潟県内では、親世代が高齢となり、相続や認知症への備えを考えるご家庭が増えています。
特に、
「子どものことが心配なので、自分が元気なうちに準備しておきたい」
というご相談は、通常の相続対策とは少し違った視点が必要になります。
例えば、
ケース1 自宅をどうするか
親が亡くなった後、障害のある子が自宅に住み続けるのか。
施設に入ることになった場合、自宅を売却するのか。
売却した場合、その代金をどのように管理するのか。
ケース2 賃貸不動産がある
親が所有しているアパートなどから毎月家賃収入がある。
その家賃収入を子どもの生活費に使いたい。
このような場合には、不動産の管理と生活費の確保を一体的に考える必要があります。
ケース3 預貯金を生活費として使いたい
親が残した預貯金を、毎月一定額ずつ子どもの生活費として使いたい。
この場合も、「誰が管理するのか」「どのようなルールで使うのか」を事前に考えておくことが重要です。
家族信託を使った「親亡き後」の財産管理
例えば、父親が賃貸アパートを所有しているとします。
父親には障害のある長男と、健常な次男がいます。
父親は、
「自分が亡くなった後も、長男の生活費を家賃収入から支払ってほしい」
と考えています。
そこで、父親が元気なうちに、次男を受託者として不動産を信託することを検討します。
父親が亡くなった後も、次男が賃貸アパートを管理し、家賃収入から長男の生活に必要な費用を支出する、という仕組みを設計することが考えられます。
このように家族信託を活用することで、
「親がいなくなった後も、親が考えていた財産管理を継続する」
という仕組みを検討できます。
ただし、家族信託だけですべて解決するわけではありません
ここは非常に重要です。
家族信託は非常に便利な制度ですが、
「障害のある子どもの将来の問題をすべて解決する制度」ではありません。
家族信託は主として財産管理の仕組みです。
例えば、
「どこの施設で生活するのか」
「医療について誰が支援するのか」
「福祉サービスの契約をどうするのか」
「日常生活の支援を誰が行うのか」
といった問題については、家族信託とは別に考える必要があります。
そのため、
家族信託+遺言+成年後見制度+福祉サービスなど
を組み合わせて考えることが重要です。
成年後見制度も一緒に検討する
障害のあるお子さまの財産管理を考える際には、成年後見制度も重要な選択肢です。
成年後見制度は、本人の判断能力などに応じて、成年後見人等が財産管理や法律行為を支援する制度です。
一方、家族信託は、
「親が元気なうちに、将来の財産管理の仕組みを作っておく」
という性質があります。
したがって、
「家族信託と成年後見のどちらが正解か」
と考えるのではなく、
それぞれの制度の役割を理解した上で、家庭の事情に合った仕組みを考えること
が大切です。
遺言も忘れてはいけません
親亡き後の問題を考えるとき、家族信託だけでなく遺言も重要です。
例えば、親が亡くなった後、
「どの財産を誰に相続させるのか」
を明確にしておく必要があります。
特に、障害のある子と他の兄弟姉妹がいる場合には、相続について家族間で意見が分かれる可能性もあります。
そのため、
家族信託で管理する財産
と
相続によって承継させる財産
を整理しておくことが重要です。
受託者を誰にするかが非常に重要
家族信託では、「誰を受託者にするか」が大きなポイントになります。
例えば、障害のある子の兄弟姉妹を受託者にするケースがあります。
しかし、
「兄弟だから大丈夫」
と簡単に決めるのではなく、
- 財産管理をきちんとできるか
- 長期間にわたって対応できるか
- 他の家族からも信頼されているか
- 将来の生活支援にも関わる意思があるか
などを考える必要があります。
また、受託者に負担が集中しすぎないようにすることも重要です。
親亡き後、受託者となった兄弟姉妹が高齢になってしまう可能性もあります。
したがって、
「今誰ができるか」だけではなく、「10年後、20年後もできるか」
という視点が必要になります。
家族信託は「財産を守る」だけではない
家族信託を検討するとき、
「認知症対策」
「不動産管理」
「相続対策」
というイメージを持たれる方が多いと思います。
しかし、家族信託には、
「大切な人の将来を守るための財産管理」
という側面もあります。
特に障害のあるお子さまの場合、
「自分が亡くなった後も、この子が安心して生活できるようにしたい」
という親の想いを、財産管理の仕組みとして具体化することが重要です。
「親亡き後」の準備は、早いほど選択肢が多い
「まだ元気だから大丈夫」
「子どもが若いから、まだ先の話」
と思っているうちに、時間が経ってしまうことがあります。
しかし、親が元気で判断能力が十分にあるからこそ、家族で話し合い、さまざまな選択肢を比較することができます。
例えば、
- 財産を整理する
- 家族信託を検討する
- 遺言を作成する
- 成年後見制度について確認する
- 支援してくれる家族を決める
- 福祉関係者と情報共有する
- 子どもの生活に必要な費用を整理する
といった準備を少しずつ進めることができます。
新潟で「親亡き後」の家族信託をご検討の方へ
「自分たちが亡くなった後、この子はどうなるのだろう。」
この不安を、親御さまだけで抱え込む必要はありません。
親亡き後の問題は、
家族だけでなく、司法書士、弁護士、税理士、社会福祉関係者など、必要な専門家と一緒に考えていくことが大切です。
そして、最も大切なのは、
「家族信託を作ること」
そのものではありません。
「親がいなくなった後も、子どもが安心して生活できること」
です。
家族信託は、そのための一つの手段にすぎません。
だからこそ、最初から「家族信託を作ろう」と決めるのではなく、
「親亡き後、どのような生活をしてほしいのか」
「そのためにはどのような財産が必要なのか」
「誰に財産管理をお願いするのか」
という順番で考えることをおすすめします。
まずは、ご家族の状況を整理することから
親亡き後の対策は、ご家庭によって正解が異なります。
自宅しか財産がないご家庭と、賃貸不動産や預貯金など複数の財産があるご家庭では、必要となる対策も違います。
また、障害のあるお子さまの生活状況や、兄弟姉妹との関係、将来の施設入所の可能性などによっても、適切な方法は変わります。
だからこそ、まずは、
「今、何が心配なのか」
を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。
新潟で家族信託や相続、成年後見、遺言などについてお悩みの方は、司法書士にご相談ください。
私たちは、単に書類を作成するだけではなく、
「親がいなくなった後も、大切なお子さまが安心して暮らせるためにはどうすればよいか」
という視点から、ご家族に合った財産管理・相続の方法を一緒に考えます。
「まだ元気だからこそ、今のうちに相談しておきたい」
そんな段階でのご相談も大歓迎です。
親亡き後の問題は、早く準備を始めるほど、選択肢を増やすことができます。
大切なお子さまの将来のために、まずはご家族で話し合うことから始めてみませんか。




