現在、父は新潟で生活しています。数年前までは父と母が一緒に住んでいましたが、母が数年前に亡くなったため、現在は父が自宅(父名義)で一人暮らしをしています。
一人暮らしの父が心配なので、今も月3~4回は実家に帰り、父の支援をしていますが、父も高齢になってきたため、父の今後の財産管理や自宅の管理が心配です。自分の財産を自分で管理できなくなってしまう事態に備えて、家族信託という制度があることを知りました。
しかし、一人息子の私は県外に住んでおり、他に頼れる親族は新潟にはいません。今後、父の認知機能が低下した場合に成年後見制度を利用することには抵抗があるので、何かしらの対策はしておきたいと私も父も考えているのですが、私のような遠方にいる親族でも受託者になれるのでしょうか?
ご相談ありがとうございます。
成年後見制度では、財産の状況によりますが、親族が後見人になれずに、専門家が後見人となるケースが多くあります。専門家が介入してしまう点や専門職後見人への報酬が発生してしまう点で、お客様のように抵抗を感じる方も少なくありません。また、成年後見制度は家庭裁判所の監視下にあるため本人の財産に関する自由度がとても低くなってしまいます。
一方で、家族信託とは「自分の財産を自分で管理できなくなってしまう事態に備えて家族に財産を預けて管理してもらう制度」です。家族に財産を託すことにより、柔軟な財産管理が可能となりますし、管理をお願いする人をご自身で決めていただくことが出来ます。
お客様のように、成年後見制度に利用をためらう方は、お父様がお元気なうちに家族信託契約を行うことをおすすめします。
家族信託の当事者
家族信託の主な当事者は、「委託者」「受託者」「受益者」です。
- 委託者:財産を預ける人
- 受託者:財産を預かり、管理する人
- 受益者:信託財産から経済的利益を受け取る人
お客様の場合ですと、財産を持っているお父様(委託者)が、お客様(受託者)に対して、不動産・現金等の財産を託し、一定の目的に沿って、お客様(受託者)がお父様(受益者)のために管理・処分を行うことになります。
受託者になれる人
受託者になれる家族の範囲に、委託者からみて何親等まで、などといった制限はありません。また、個人のほか、法人(一般社団法人)も受託者とすることが出来ます。
ですので、お客様のような遠方にいる親族でももちろん受託者となることが可能です。
ただし、受託者は、財産を預かる者として、お金にルーズではなく、信託財産の内容や受益者の状況を総合的かつ的確に判断する能力を持つ人であることが必要です。お客様は遠方ながら月に何度もご実家に帰られているとのことなので、十分に財産の管理をしていただけるのではないでしょうか。
家族信託の契約内容は、家族の事情にあわせて柔軟に決めることが可能です。遺言や生前贈与、成年後見制度など、ほかの方法と比べてみて、自分や家族にあった方法はどれか、話しあってみてはいかがでしょうか。