私たちには子どもがいないので、どちらかが亡くなったとき、相続人になるのはお互いだけだと思っていました。でも先日、配偶者の他に配偶者の兄弟も相続人になることを知り、中にはあまり関係がよくない人もいるので、このままではどちらかが亡くなったときに苦労することが分かりきっています。遺言を書いておけば揉め事もないと聞きました。夫婦で遺言を書きたいのですが、相談に乗ってくれませんか。
ご相談ありがとうございます。お客様のおっしゃる通り、お子様のいらっしゃらないご夫婦ですと、ご夫婦のどちらかが亡くなったとき、相続人となるのは、配偶者様の他、お亡くなりになられた方のご両親が既にお亡くなりになられていた場合、ご兄弟が相続人となります。相続分は配偶者様が4分の3、ご兄弟が4分の1となります。
ご自身の兄弟ではなく、亡くなった配偶者様のご兄弟と話し合いをして、どのように財産を分けるか決めなければなりません。中にはあまり関わりがない方がいて話し合いをすることが難しかったり、そもそもご夫婦二人で築き上げた財産であるのに、どうして分け合わなければいけないのかと納得できなかったりする方も多くいらっしゃいます。そのような思いをしないために、生前にご遺言書を作成しておかれることはとてもいいことだと思います。
ただ、遺言書にてそれぞれの配偶者を指定しておけば安心とは言い切れません。亡くなる順番によってはご自身が先祖代々引き継いできた財産を相手の親族が受け取ることになります。誰が最終的に自身の財産を引き継ぐか分からないですし、あまり関係のよくない親族がいる場合はそちらに財産が流れないよう回避したいですよね。
また、遺言書は亡くなった後の財産について指定しておくものであり、生前の財産管理については当然のことながら何ら効力が及ぶものではありません。
お子様のいらっしゃらないご夫婦にとって、亡くなった後のこともさることながら、これから先の生活の方が心配という方も多いのではないでしょうか。これから歳を重ねていくと、ご夫婦二人で支え合っての生活が少しずつ難しくなっていくと思います。私の知り合いの80代の方も、脚が痛くて買い物に行けないとか、物忘れが増えてきて大事な手続きをする事が心配だ、なんてことをよく話しています。
どなたか頼れる人がいれば安心なのですが、親しくされている方は周りにいますか?
例えば甥っ子さん、姪っ子さんとのご関係はいかがですか?
子どものいないご夫婦の場合、甥っ子さん姪っ子さんが面倒を見てくれているという方もいらっしゃいますね。身近に支援してくる方がいる場合、まずは財産を配偶者に引き継いで、そのあとは生前の支援のお礼として支援をしてくれた方に財産を引き継ぎたいというご希望をお持ちの方がいますが、実は遺言では二次相続以降の指定はできず、ご自身の遺言書だけでは実現できない内容になります。
また、先程もお伝えした通り、遺言書は亡くなった後のことにしか効力がなく、遺言書に名前があるからといって、生前の財産管理を担えるわけではありません。元気なままコロッと亡くなれば何も問題ありませんが、認知症になったり、病気を患い正常な判断ができなくなったりしたとき、残された人たちは大変な思いをすることになります。例えば、甥っ子さんが病院に連れていってくれて診療代を立て替えてくれたけど、本人は認知症でお金がおろせない、、、なんてことも認知症対策を講じていなければ容易に想定される出来事です。
財産の引継ぎ先を次の次の世代まで決めておきたい、かつ生前の財産管理も担える権限を与えておきたいという場合、「家族信託」という制度がおすすめです。
家族信託を一言でいうと、「自分の財産を自分で管理できなくなってしまう事態に備えて、家族などに財産を管理・処分する権限を与えておく」ことです。
また、この家族信託では、財産管理の権限だけではなく、二次相続以降の財産の引継ぎ先まで指定することができます。つまり、自分が亡くなった後、財産は妻へ、妻が亡くなった後は支援してくれた甥へ引き継ぐこととすることもできます。
家族信託では遺言以上の希望を叶えることができますが、そのお客様によって、何が最適かは異なります。遺言も家族信託もどちらも弊所でご相談可能ですので、生前対策でお悩みの方は一度ご相談ください。