自分の財産は妻に相続させたいが、妻は認知症です。何かいい方法はないでしょうか?

質問:新潟市在住80代男性(Yさん)

私は妻と二人で生活しています。

近頃、認知症になると口座が凍結してしまうという話をよく耳にします。私自身、今は認知症ではありませんが、いつどうなるかわからないという不安があります。近くに娘が住んでいるので何かと頼りにしているのですが、やはり、なにかしらの生前対策をしてほしいと言われたので相談に来ました。

今の私の現状は、私名義の自宅にて軽度認知症の妻との二人暮らしです。妻の預貯金はほとんどないので、私の預貯金で日々の生活費を賄っています。この状況で私が不安に思っていることは、私が今後認知症になり口座が凍結してしまうことと、私が亡くなった後の妻の生活です。

私は、認知機能は衰えてはいませんが、数年前に癌を患ったこともあり、正直、あまり先が長くないのではないかと感じています。妻には、私が先に亡くなった後も何不自由なく生活してほしいので、私の財産は妻に相続させたいと思っていますが、本人が認知症気味なので、財産管理ができるかどうか不安です。

あとは、自宅も今後施設に入った時は売却して、施設利用料に充てられたらいいなと思っています。娘がインターネットで生前対策について調べたようですが、いろんな制度があるようで何にすればいいか決めかねています。

私に合った生前対策をご提案いただけないでしょうか?

回答:司法書士法人トラスト

ご相談ありがとうございます。

認知症は誰にでも起こりうる問題ですので、安心して今後の生活を送っていただくためには、元気なうちにご自身に合った生前対策をすることがとても重要です。

Yさんからお聞きした現状をもとに、このまま何の対策をしなかった場合はどうなるのかと、Yさんに合った生前対策をご提案させていただきます。

何の対策もせず認知症になってしまった場合

預貯金が引き出せなくなる

認知症になってしまいますと口座が凍結され、預貯金を引き出すことができなくなってしまいます。老人ホーム等の施設に入所した場合、施設の月額利用料(家賃・管理費・食費込)で約15万~20万円+日常生活費(医療費・おむつ代・介護サービス利用料・その他雑費)で約3万円~5万円と、施設や個人により差はありますが約20万円~30万円が毎月かかります。こういった費用の支払いに預貯金を活用したいところですが、ご家族であっても預貯金の引き出しができず困ってしまいます。

不動産の売却ができなくなる

認知症になってしまいますと、預貯金同様、ご自宅などの不動産も凍結されてしまいます。今はご自宅で生活されているので、すぐに売却する必要性はないかと思いますが、数年後はお二人とも施設に入所されているかもしれません。お二人分の施設利用料等を捻出するために、自宅の売却を娘さんが検討されたとします。そのタイミングで、不動産の所有者であるYさんに意思判断能力があれば問題ありませんが、認知症になっていた場合は売却をすることができず、空き家を放置し続けることになってしまいます。

空き家といえども草取りや庭木の剪定などの定期的な手入れが必要ですので、業者に依頼すればその分費用がかかりますし、娘さんがご自身で草取りするにしても相当な労力を費やすことになります。また、空き家であっても固定資産税は発生しますので、活用されていない不動産に対して毎年無駄なお金がかかってしまいます。

相続手続きを進めることができない

Yさんが万が一お亡くなりになられた際は相続手続きが必要となり、ご相続人である奥様と娘さんで遺産分割の協議をすることになります。しかし、その時点で奥様が認知症等で判断能力が低下していた場合は、遺産分割協議をすることができませんので、相続手続きが進めることができなくなってしまいます。

そのような状態で相続手続きを行うためには、奥様が成年後見制度を利用するしか方法はありません。ですが、司法書士や弁護士などの専門職が後見人となった場合は、報酬が発生してしまいます。

報酬額はご本人の財産額によって異なりますが、月2~6万円となります。日本の成年後見制度は、当初の目的(例:相続手続き)を達成したからといって途中で制度の利用をやめることはできませんので、ご本人の判断能力が回復するかお亡くなりになるまで後見人の職務は続きます。成年後見制度を10年間利用し、報酬額が月4万円だった場合、10年間で480万円、月6万円なら720万円を後見人に支払うことになってしまいます。

トラストからのご提案

Yさんに今後起こり得る問題を回避し、Yさんの希望を実現するには、受益者連続型の家族信託を締結していただくと良いと思います。

家族信託とは、自分の財産を自分で管理できなくなってしまう事態に備えて、家族などに財産を管理・処分する権限を与えておく制度です。

ご自身の財産は、いったんは奥様にご相続させたいとのことですが、財産の行先を指定するのみでしたら「遺言書」を作成するという手段もございます。ですが、遺言はあくまで亡くなった後の財産の行先について指定しておくものです。生存中は何の効力も生じませんので、生前の財産管理については当然のことながら何ら効力が及ぶものではありませんし、認知症対策として役に立つものでもありません。相続した奥様自身が認知症になってしまってた場合、せっかくの財産を自分で管理し消費することができず、塩漬けとなってしまう可能性があります。

一方、家族信託は、自分の財産を自分で管理できなくなってしまう事態に備えて、家族などに財産を管理・処分する権限を与えておく制度です。「遺言」が生前中は効力が発生しないのに対し、生前から財産管理を担うのが「家族信託」です。

受益者連続型信託とは

家族信託では、一代限りの信託契約だけではなく、受益者(信託財産から経済的利益を受ける人)を連続的に取得させる「受益者連続型」の信託契約も可能です。

Yさんの場合ですと、このような信託契約の設計はいかがでしょうか。

  • 委託者:Yさん
  • 受託者:娘さん
  • 当初受益者:Yさん
  • 第二受益者:奥様(Yさん亡き後)
  • 帰属権利者:娘さん
  • 信託財産:不動産及び預貯金大半
  • 信託の期間:信託契約締結した時〜Yさん及び奥様が亡くなるまで

家族信託(受益者連続型の信託契約)を活用すると、当初受益者のYさんがご存命の間は、信託財産はYさんのために活用します。Yさん亡き後は、信託した財産(受益権)は奥様に引き継がれますので、成年後見制度を利用せずにスムーズな遺産承継を実現することができます。また、財産管理も娘さんが引き続き担ってくれますので、奥様の余生も安心ですね。奥様が亡くなった後、残った信託財産は娘さんへ引き継がれます。

また、信託契約書の中で、自宅不動産の管理処分権限(売却することができる権限)を受託者である娘さんへ付与します。そうすることで、信託契約後の信託不動産に関する売却についても、すべて受託者である娘さんが明確な権限をもって手続きすることが可能になりますので、Yさんの意思確認の手続きを要請されることはありません。

信託契約の締結により、定められた信託の目的に従って、受託者による不動産の管理・処分が実現できますので、委託者の意思判断能力や健康状態等に左右されず、スムーズに不動産の売却を進めることが可能となります。

Yさんのような不安や悩みを抱えてご相談にいらっしゃる方は年々増えていますし、適切な生前対策を講じていなかったがために成年後見制度を利用することになり、「もう少し早く対策しておけばよかった」と後悔されているご家族もたくさん見てきました。

元気な(判断能力がある)うちに、一度ご家族で家族信託についてご検討されてみてはいかがでしょうか。

家族信託に関するお問い合わせ
ご相談は面談にて承ります
ご相談料(1時間あたり)
生前対策・家族信託のご相談 11,000円(税込)
お電話でのお問い合わせ

「家族信託のホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日10:00-18:00(土日祝休み)
   
メールでのお問い合わせ

    個人情報の取り扱いについて

    面談日(ご希望の場合)任意

    第1希望:

    第2希望:

    第3希望:

    ご相談は面談にて承ります
    ご相談料(1時間あたり)
    生前対策・家族信託のご相談 11,000円(税込)

    ページトップへ戻る