義理の母のことなのですが、年齢も重ね、今後のことがいろいろと心配になってきました。
最近は介護認定を受け介護サービスを利用しはじめました。頭はしっかりしているのですが、身体が思うようにいかないこともあるようで、私がサポートをしています。義母の福祉関係者とは認知症が進んできたら成年後見制度を利用しようと話をしています。
お金の管理をお願いでき、私が一緒に銀行に連れて行かなくてもいいと聞き、たしかに成年後見人に支援をお願いできれば楽になると思いますが、義母の財産を家庭裁判所に監督されるのはなんだか気が進みません。何かいい方法はないのでしょうか。
ご相談ありがとうございます。
お義母様のご支援大変ですね。認知症が進行し、判断能力が乏しい状態にある場合は、成年後見制度を利用する他支援の方法はありませんが、まだお元気ということであれば他にも方法があります。
その一つが家族信託です。
家族信託は認知症対策として最近取り組まれる方が多いのですが、家族信託は判断能力のある元気なうちにしか利用することができません。いい制度ですが、タイミングを逃してしまう方も多いので、このタイミングでご相談いただけてよかったです。
家族信託と成年後見制度
家族信託は成年後見制度と同じく、財産管理を代理人(家族信託では受託者といいます)にお願いできる制度となります。成年後見制度と異なる点はいくつかありますが、大きなことろですと①金額面 ②財産管理の自由度 に違いが挙げられるかと思います。
金額について
成年後見制度を利用した場合、法定代理人となった成年後見人には報酬が発生することになります。その報酬額はご自身のお持ちの財産額によっても異なりますが、月額2万円から6万円、年間24万円から72万円程度と言われています。
現行の制度ですと、成年後見制度を利用した場合、お亡くなりになるまで成年後見人の職務は続くため、仮に利用開始からお亡くなりになるまでの10年間この制度を利用したとしたら、最低報酬額だとしても240万円を成年後見人に支払うことになります。
一方家族信託では、契約書の作成に専門職が携わらせていただいた場合、いくらか報酬が発生しますが、かかるのはその1回のみです。弊所の報酬体系ですと、最低でも45万円~となっておりますが、それでも成年後見人へ支払う報酬を思えばお安いのではないのでしょうか。
財産管理の自由度
成年後見制度はお客様ご存じの通り、家庭裁判所の監督を受けながら財産管理を行うことになります。これは成年後見制度が法律に基づく制度であり、かつご自身で物事を判断することが難しい方を「法的に守る」ための制度であるからです。利用されるご本人様にとって不利益が生じてないか家庭裁判所が監督することになります。
不利益となる財産管理はできないため、例えば毎年の恒例行事となっていた家族旅行の費用を支出したい、他の家族が読むための新聞代を支出したいといったときには家庭裁判所の許可が必要になる上、ご本人のための支出ではないことから、許可が出ないケースがほとんそどです。
もちろん、金銭の支出だけではなく、不動産の管理・処分についても同様の取り扱いとなっています。ご自身の財産であるにもかかわらず、また、これまで財布を同じくしていたご家族のための支出であっても思うように使えなくなってしまいます。
一方で家族信託は、家庭裁判所等、第三者に監督されることなく、ご自身の意思を反映させた財産管理が可能ですし、信託の目的に反しなければ、成年後見制度ではなかなか実現できない、借入やご自身の趣味のための支出、ご家族への扶養の範囲内での支出等も可能となります。
家族信託より成年後見制度の方が適している場合も
家族信託のいい点を挙げてみましたが、お客様の家庭環境や財産状況によって成年後見制度の利用がふさわしい場合もございます。まずは一度ご相談ください。