私と息子間での家族信託契約を検討しています。私には娘もいますが、とにかく心配性で私が何か始めようとするとあれやこれやと聞いてきて、もう大変です。穏便に進めたいですし、娘には伝えずに進めたいのですが、そういうことはできますでしょうか。やはり家族には話をして承諾を得なければいけないのでしょうか。
ご相談ありがとうございます。
法律的には契約の当事者が同意していれば良いので、今回は娘さんの承諾がなくても問題ありませんが、心配症とのことであれば尚更、多少煩わしい思いをしたとしても、契約前にしっかりご相談される方が後々のトラブルを避けるためにも良いかと思います。
家族信託は、家族や推定相続人も交えて話し合うのが理想
もっとも、家族信託契約を検討するにあたっては、まずは契約の当事者だけではなく、その他の家族、推定相続人を交えて話し合うことが理想とされています。
ご自身の現時点での財産状況、そして今後の収支予定、今後も在宅で暮らしていきたいのか、施設での生活を希望するのか等を家族間で共有することが大切です。なかなかこういったお話を家族全員に切り出すのは気が進まないかもしれませんが、ご自身の気持ちをしっかり伝えておかなければ、今後、その気持ちに沿ったサポートを受けることは難しいのではないのでしょうか。
また、特定の誰かだけに相談するのも残された家族からするとあまりいい気持ちはせず、トラブルが生じる可能性も考えられます。全員と共有するからこそ、一方的ではない、家族の思いも込められた老後生活や円満な相続が実現できると思います。
この家族全員での話し合いも法律で決められているわけではありませんが、ここでの話し合いを丁寧に行うことで、円満な運用、信託契約後のミスマッチを防ぐことにも繋がります。どうして家族信託をするのか、なぜ家族信託でなければいけないのか、誰が管理するのか、信託する財産は何か、信託が終了した時に残った財産はどうするのかなど十分に話し合う必要があります。
というのも、ここでの話し合いの内容をもとに契約書の作成を進めていくため、話し合いが不十分だと、願いを実現する契約書の作成ができないからです。せっかく時間とお金をかけて作るのにそれでは勿体ないですね。
家族信託の話し合いのあとは
ちなみに家族信託はご家族間での話し合いの後、
- 信託契約書の作成
- 信託財産の名義変更
- 運用開始
の順で進めてきます。
話し合いをまとめた信託契約書は、私文書でも公正証書でも作成できますが、私文書は紛失の可能性があること、信託契約そのものの有効性を問われる可能性があること、また、信託口口座を開設する際に金融機関から公正証書での信託契約書の提示を求められること等から当事務所ではおすすめしていません。
私文書、公正証書どちらにもメリットデメリットがありますが、長く法律に携わる公証人が関与し作成する公正証書での作成をおすすめしています。
契約書を作成した後は、信託財産と受託者の固有財産とを区別するため、信託財産の名義変更を行います。現金は信託口口座を開設し入金、不動産は法務局で名義変更を行い、ようやく信託財産の管理、運用が始まります。
信託財産を管理する上では、信託の目的に沿っているかを考えますが、この信託の目的にはご家族で話し合いをして共有された思いや願いが込められています。繰り返しになりますが、ご家族での話し合いが、その後の運用を行なっていく中でも大切な指針となりますので、やはり話し合いには1番時間をかけたいところです。
財産状況、家族関係によってもご家族と相談すべきことは様々です。どのようなことを相談する必要があるのか、イメージが湧かない方もいらっしゃるかと思います。
また、家族信託契約は当事者だけで進めることもできますが、ご家族にとって大切な契約、そして法律や税務が絡み合う難しい契約となりますので、専門職と一緒にお手続きを進めることをおすすめします。お悩みごとをお聞かせいただければ一緒に考えていきますので、どうぞお気軽にご相談ください。