父の認知症対策として、父と私で、現金と不動産を対象とした家族信託契約を締結したいと考えています。私が受託者となる予定なのですが、信託財産をどのように管理すればいいのか不安です。現金は信託専用口座を開設し、その中で父に関するものの支払いをすればいいと聞き、なんとなく契約後のイメージが湧くのですが、不動産についてはどのように管理していけばいいかイメージが湧きません。具体的にどのようなことをするのでしょうか。
信託契約書には何のために信託をするのか、というその信託の目的を設定し記載します。信託財産の管理はその目的を達成できるように受託者は与えられた権限の中で管理を行うことになっているので、まずは信託の目的をよく確認してみてください。
具体的な内容は信託の目的を確認しましょう
不動産の管理について、基本的には契約後、
- 不動産の信託登記
- 保険の名義変更
- 固定資産税の引き落とし口座変更
の手続きをしていただき、その後、信託の目的に沿って管理を行います。
例えば、「~受益者に良好な住環境を保全,提供し~」という内容が信託の目的に掲げられていた場合、庭木の剪定をするなど、住み心地の良い環境を整えてあげることも受託者としてするべきことの一つかと思います。
ちなみに、自宅を信託されたお客様は、「将来、施設に入ったら自宅が空家になってしまう」「空家になったら売却して、その売却代金を老後の生活資金にしたい」とのお考えから契約を締結した方がほとんどで、そのようなことに対応できるよう信託を設計しています。預貯金のように、日常的に管理をすることはありませんが、売却やリフォーム等を行う場合に受託者として任務を行うことになります。
もう、ご存じとは思いますが、不動産の売却は、本人の意思による契約行為ですから、認知症等で判断能力が乏しい状態にある場合、売却することができません。家族信託を結んでおけば、認知症になっても、売却したいときに売却ができ、資産凍結を防ぐ、有効な方法といえます。
信託契約を結んだあとに受託者がすべきこと
以下では、不動産についての信託契約を結んだ際に、初めに受託者にしていただくことを解説していきます。
不動産の信託登記
不動産を信託する場合、まずは信託登記という登記を行います。この登記により登記記録上には「受託者」という肩書で管理を担う方のご住所とお名前が記載され、形式的所有者としてみなされることになります。
売却時には本来、所有者が行うべき、売買契約書への署名や、本人確認を形式的所有者である受託者が行うこととなります。
家族信託をしているからといって、売却の手続きが煩雑になったり不利になったりすることもありません。建替えをしたいとき、賃貸に出したいときも手続き自体は信託していない不動産を取り扱うときと一緒ですのでご安心ください。信託登記は、契約終了後速やかにお手続きをお願いします。契約時は意思判断能力がしっかりあった委託者が、登記をする際に状況の変化がある可能性があるためです。数日以内には法務局へ申請できるようにしましょう。
ちなみに、登記申請を行うと、新潟県では数か月後に不動産取得税の通知が届いているようです。しかし、委託者=受益者の信託において、不動産取得税はかかりませんので、信託契約書のコピーを返送し、信託した旨の通知を県に対してお知らせください。
火災保険・地震保険の名義変更
火災保険・地震保険の会社へ信託した旨を連絡してください。保険会社により手続が異なりますので、保険会社の指示に従い、手続きをお願いいたします。
固定資産税の引き落とし口座の変更
固定資産税について負担すべきは委託者であるお父様です。ですが、信託の目的に沿った支出になりますので、信託口座から引き落としできるように変更しておくと、受託者の方が楽になると思います。12月31日までに登記した場合は、次の年度は受託者宛に届くと思いますが、口座引き落としの設定をされたい場合は、市町村役場までご相談いただければと思います。