父が亡くなり、新潟の母親が一人暮らしとなりました。母親から電話で、一人暮らしの暮らしぶりを聞きました。とにかくたくさんの訪問販売の営業が来て断るのも一苦労で困っているみたいです。また、母は腰が強くはないので、一人で家中の家事をこなすのも大変だし、一人だから張り合いもないんだ、と話していました。母のことが心配になったので、いろいろ調べてみましたら、どうやら家族信託というものが私の家族には合っている気がしました。
そこで、家族信託契約を作成したいと思っています。ありがたいことにインターネットで雛形をみつけました。これをアレンジして家族間で契約をしようと思いますが、何か問題が発生する可能性はありますか?
ご相談ありがとうございます。お母さま、お1人でお過ごしとのこと心配ですね。家族信託契約について、最近はインターネットで雛形があったり、書籍に雛形がついていたりするケースもありますよね。ご家族だけで作成を進める場合、
- 信託契約書のひな形をダウンロードする
- ひな形を参考にアレンジする
- 委託者と受託者で契約し、信託契約開始。
- 金融機関で信託用の口座を開設する、不動産の登記をする
このような流れで進めていくことになります。手順としては簡単ですし、専門家費用もかかりません。しかし、不備があると信託契約自体が無効になってしまうケースもありますし、信託用の口座が作れない、法務局で登記申請が通らない等のリスクもありますので、メリット、デメリットを考慮した上で作成することが大切です。
ご家族だけで家族信託契約書を作成することをおすすめできない2つの理由
当事務所では2つの理由からご家族だけでの作成をおすすめできません。
法律知識の不足
1つ目は、インターネット上の雛形が、ご相談者様のご家族にとって最適な契約となっているか、また法的な問題点や矛盾がないか確認することが出来ないため、家族信託を運営していく中で予想も出来ないような問題に直面してしまうことがあるからです。
そもそも信託を行う目的があったはずなのに、信託契約を作成すること自体が目的にすり替わってしまっていることが大きな問題といえます。
また、家族信託は信託法という法律を根拠に運営されていますが、この信託法を十分に理解している方は、専門家であっても少ないかと思います。せっかく時間をかけて作成するものなのですから、不備のない契約書、あらゆる事態に対応できるような契約書を完成させたいですよね。
なぜ家族信託をしたいのか、家族信託を行うことで、どの問題が解決できるのか、専門家を交えてしっかりとご家族の中で整理することがおすすめです。
公正証書で作成していない
インターネットの雛形をアレンジして作成することをおすすめできない理由の2つ目は、公正証書で作成していないことです。
公正証書とは、公証制度に基づき作成した証書のことです。
公正制度とは、国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ、私的法律関係の明確化、安定化を図ることを目的として、証書の作成等の方法により一定の事項を公証人に証明させる制度です。つまり、公正証書で契約書を作成すると、公文書となり、文書の成立について真正である(作成名義人の意思に基づいて作成されたものである)ことについて強く推定が働くとされています。
難しい言い方になってしまいましたが、本人の意思に基づいて作られたことが公に証明されているといえます。
司法書士法人トラストでは、信託契約書は特段の理由がない限り公正証書での作成をおすすめしております。理由としては、
- 公的な文書であること
- 金融機関から公正証書での作成を求められるから
という2点があげられます。
2.について詳しく説明します。
金銭について信託を行うと、委託者は受託者に金銭を預けます。受託者は委託者に代わって金銭を管理するのですが、受託者個人の財産とは分別する必要があり、信託用の口座を開設する必要があります。
例えば、新潟の第四北越銀行で本来的な信託用の口座を開設する場合、「専門家がかかわった公正証書で信託契約書を作成する」という条件があるため、特段の理由がない限り公正証書での作成をおすすめしているのです。
なお、新潟の銀行でいち早く家族信託に取り組んだのは、第四北越銀行です。第四北越銀行では2020年より家族信託業務を行っており、その一環として第四北越銀行で家族信託を希望するお客様に専門家を紹介する取次サービスを行っています。
司法書士法人トラストでは、この取次サービスでのご紹介により沢山のお客様の信託契約書作成のお手伝いをさせていただきました。第四北越銀行での信託口座開設を希望される場合、第四北越銀行とも連絡をとり、調整を図りながら作成を進めているため、よりスムーズにお手続きができるかと思います。
専門家と一緒に契約書を作成するのがおすすめです
インターネットの雛形では、契約書が正しくご家族に適応していない可能性があることと、公正証書ではないことから、司法書士法人トラストではおすすめできません。
信託契約は初期費用がかかることがネックになると思いますが、費用を抑えたが故に契約内容に問題があったら元も子もない話です。専門家と一緒に、安心できちんとした契約書を作成することが必要だと思います。