信託に携わろうと思ったきっかけ
司法書士として開業以来ずっと成年後見の業務を行ってきました(※現在約140人の後見人に就任しております)が、年々認知症の人は増加していくにもかかわらず成年後見制度自体の利用が伸び悩み(裁判所の統計による)、制度自体に利用しづらい問題があると考えていました。
そんなとき、成年後見制度に代替する「家族信託」という制度があることを知り、司法書士が中心となった家族信託の普及に関する団体(一般社団法人民事信託推進センター、一般社団法人家族信託普及協会)の研修を受けたことがきっかけです。
記憶に残る事案
やはり一番初めに受任した事案です。守秘義務があるため詳細は控えますが、お父様の相続でお手伝いをさせていただき、お母様が相続し、そのお母様の預貯金の管理、ご自宅の売却の可能性を前提に信託のご提案をしましたところ、私が信託について初めてであるにもかかわらず信頼いただいてご依頼いただいた事案です。
未経験の私にご依頼いただいたこの一件目があったからこそ、現在の私があると思います。
新潟県での信託の普及について
公表されている統計がないので正確なことは言えませんが、新潟公証人役場の先生からのお話では現在3件前後/月とのことです。
司法書士法人トラストでは毎月1~2件程度公正証書にて信託契約書作成に関わらせていただいておりまして、新潟市近郊のシェアはかなり高いと自負をしております。
家族信託の普及に必要なこと
司法書士法人トラストにご依頼をいただく方の半数以上が、「新潟在住の親御さんを抱える県外のご子息様」からとなっております。
この事情から分かるとおり、首都圏では「家族信託」が相当認知されているようです。新潟も少しずつ認知度が上がり問い合わせもここ数か月かなり増加していると感じております。
時間はかかると思いますが、もっと認知され利用者がふえていくとおもわれます。
信託を通じてどのようになってほしいか
今後法改正が予定されているようですが、身近なご家族にとって現在の成年後見制度は使いづらい制度であることは間違いありません。
家族信託によってご家族のお力でお父様お母様の大切な財産を守ることができますので、弁護士や司法書士に通帳を握られることもなく、ストレスなく認知症に対処することができます。
今後の家族信託の行方
どうしても成年後見制度との比較になってしましますが、成年後見制度の利用が伸び悩む中、やはりほかの選択肢は「家族信託」となります。
時間の経過とともに新潟でも家族信託が浸透してきていると実感しておりますので今後は、益々利用者は増えていくと思います。
司法書士に依頼するメリット
家族信託の契約をするためには「信託法」の理解が必要になります。私自身、「信託法」の勉強に相当のお金と時間を費やしました。弁護士や司法書士等の資格のない一般の方が、「信託法」を理解することは相当ハードルが高いと考えます。
また、ほとんどの金融機関で「信託口座」を開設する際に、司法書士や弁護士等の関与が求められるのが現状です。
家族信託でしかできないこと
例えばある男性の相続人が前妻のお子さん(成人)と後妻さんで預貯金が200万円、不動産が1800万円というケースでは、男性は後妻さんの住居はできる限り確保したいと考えると思います。
ところが、遺言を作成したところで遺留分の問題は残りますし、最悪話がまとまらなければ自宅を売却ということになるかもしれません。しかし、家族信託を使えば、後妻さんの住居を確保し、後妻さんの死亡後にお子さんに名義変更できるように設計することができます。
これは遺言ではできないことであり「家族信託」だからこそできることになります。
後見業務に力を入れてきた経験から(家族信託と後見制度)
成年後見業務は開業当初から多数のご依頼をいただきまして現在約140人のお手伝いをさせていただいております。私たちが就任しているのは、ほとんどの方が身寄りがなく、お子さんがいても事情により連絡を取っていないというような方々です。
現在の成年後見制度は、身寄りのない方々にとっては非常に素晴らしい制度であり、とても感謝される仕事であります。
しかしながら、お子さんや配偶者がしっかり支援しているようなケースでは、成年後見人が付いてしまうと通帳はすべて預けなければならなく、その後通帳の残高を後見人に尋ねても教えていただけないケースもあるようです。
このように認知症の高齢者の財産管理のために成年後見制度を利用した結果、後見人や家庭裁判所に対する不満が溜まり、利用を公開するというケースを数多く見てきました。
「家族信託」であれば、契約時に司法書士等の専門家の関与は必要ですが、その後は「家族だけで」認知症のご家族の財産管理が可能になります。
身近なご家族の将来的な認知症による財産管理がご心配な方は「家族信託」をご検討ください。
お客様はどのようなきっかけで信託を始めているか
今まで私たちがお手伝いしてきたケースでは多い順に
① お父様の相続で、残された高齢のお母様の今後の財産管理が困難になることが予想されるケースでトラストから「家族信託」をご提案
② 毎月行っている「家族信託セミナー」にご参加いただき
③ 「遺言」等の生前対策のご相談に来られたお客様に対し「家族信託」をご提案
④ 不動産業者さんや福祉関係者さんからのご紹介
ご家族の問題点について認識したうえでご相談に来られる方もいらっしゃいますが、どちらかというとこちらからのご提案がきっかけになる方が多いと思います。