事例で学ぶ家族信託|姪や甥にお世話になっている高齢夫婦ができる「安心の準備」

質問:新潟市在住80代男性(Sさん)

私たち夫婦は子どもがいません。私の姪夫婦が近くに住んでおり、スーパーや病院に連れて行ってくれたり、電球を変えてくれたり、身の回りのことを助けてくれています。私の姪程ではありませんが、妻の甥もたまに顔を出してくれています。
私の財産は自宅不動産と預金1,000万円ほど。妻の財産は預金200万円ほどです。
私が先に亡くなってしまったら、妻の生活が心配なので、まずは妻にあげたいと思っていますが、妻亡き後はお世話になった姪にあげたいと思います。妻は自分の財産は妻の甥にあげたいみたいです。
遺言で対応できますか?

回答:司法書士法人トラスト

ご相談ありがとうございます。奥様の生活を守りつつ、お世話になった方にきちんと遺してあげたいとのお考えですね。
お客様のご希望について、お亡くなりになった順番によっては、遺言書では対応できないケースがあります。以下で解説いたします。

 

 

1.子供がいない夫婦が直面しやすい相続・老後リスク

子供がいないご夫婦の場合、次のようなリスクを抱えがちです。

  • どちらかが認知症になった場合、不動産の売却・賃貸・リフォーム等ができなくなる
  • 配偶者が亡くなった後、相続人が兄弟姉妹・甥姪になる
  • 配偶者に財産を残したつもりが、想定外の人に相続権が及ぶ
  • 「老後の資金管理」を誰に任せるか決まっていない

これらは遺言だけではカバーできないケースも多く、生前からの財産管理対策が重要になります。

2.家族信託とは何か(簡潔に)

家族信託とは、
**財産を「誰のために」「誰が」「どのように管理・処分するか」**を契約で決めておく仕組みです。

  • 委託者:財産を託す人(夫・妻)
  • 受託者:財産を管理・処分する人(配偶者・信頼できる親族等)
  • 受益者:利益を受ける人(通常は委託者と同じ人)

最大の特徴は、
👉 認知症になっても財産が“凍結されない”ことです。

3.子供がいない夫婦における家族信託の典型的な活用パターン

夫婦間での財産管理信託

【よくある設計】

  • 委託者:夫
  • 受託者:甥姪
  • 受益者:夫(第一次)→妻(第二次)

👉 所有者が認知症になっても、甥姪が不動産の管理・売却を継続可能
👉 所有者死亡後も、財産の承継先を事前に指定できる

※遺言よりも柔軟で、「その後の相続」まで設計できる点が強みです。

配偶者の生活を最優先する設計

子供がいない場合、法定相続では次のようになります。

  • 配偶者:3/4
  • 兄弟姉妹:1/4

家族信託を使えば、

  • 配偶者が生きている間は 財産を100%配偶者のために使用
  • 配偶者死亡後に初めて、兄弟姉妹・甥姪などへ承継

という設計が可能です。

👉 「配偶者の老後資金を守る」ための有効な手段です。

不動産が中心の夫婦に特に有効

次のようなご夫婦は、家族信託との相性が非常に良いです。

  • 自宅や収益不動産を所有している
  • 将来、売却やリフォームの可能性がある
  • 賃貸管理を継続したい

成年後見制度と異なり、

  • 家庭裁判所の許可不要
  • 毎年の報告義務なし
  • 柔軟な売却・運用が可能

という実務上のメリットがあります。

4.遺言だけでは足りない理由

「遺言を書けば十分では?」と思われがちですが、

  • 遺言は死亡後にしか効力が発生しない
  • 認知症対策(生前の財産管理)にはならない
  • 遺言執行者の権限が限定的な場合もある

👉 家族信託+遺言の併用が、子供のいない夫婦では王道パターンです。

5.注意点(専門家として必ず伝えるべきポイント)

  • 信託設計を誤ると、税務・相続で不利になる場合がある
  • 受託者選びは慎重に(配偶者以外の場合は特に)
  • 信託登記は難易度が高く専門家でもミスをしやすい

👉 必ず司法書士・税理士の連携が重要です。

6.まとめ|子供がいない夫婦の安心を「今」つくる

子供がいない夫婦にとって、

  • 老後の安心
  • 配偶者の生活保障
  • 自分たちの意思を反映した財産承継

これらを実現できるのが家族信託です。

「まだ元気なうちに」設計することが最大のポイントです。

将来の不安は「元気な今」だからこそ解消できます

家族信託は、
「まだ必要ない」「もう少し先でいい」と思っている間に、
いざ必要になった時には手遅れになる制度でもあります。

特に、子供がいないご夫婦の場合、

  • 認知症になった後では設計できない
  • 配偶者の生活を守る手段が限られる
  • 相続人との関係で想定外のトラブルが起きやすい

といった現実があります。

私たちは、司法書士法人トラストは
「家族信託が本当に必要かどうか」から一緒に考える相談を行っています。

  • 家族信託が向いていない場合は、正直にお伝えします
  • 遺言・任意後見・生前贈与など、他の選択肢も含めて整理します

「何から始めればいいか分からない」という段階で問題ありません。
まずは一度、ご夫婦の状況をお聞かせください。

よくある質問(Q&A)

Q1.子供がいない夫婦でも、家族信託は本当に必要ですか?

A.すべての方に必要というわけではありません。
ただし、

  • 不動産を所有している
  • 配偶者に老後の生活を安心して任せたい
  • 兄弟姉妹や甥姪への相続を想定している

このような場合、家族信託が非常に有効な選択肢になることが多いです。

Q2.遺言書があれば、家族信託は不要では?

A.遺言だけでは足りないケースが多いです。

遺言は「亡くなった後」の対策ですが、
家族信託は「生きている間(認知症対策)」の仕組みです。

👉 生前の財産管理+相続対策を同時に行える点が大きな違いです。

Q3.配偶者を受託者にしても大丈夫ですか?

A.多くの場合、問題ありません。

子供がいない夫婦では、
配偶者を受託者にする設計も考えられます。

ただし、

  • 高齢の場合
  • 財産管理に不安がある場合

などは、将来のバックアップ体制も含めて設計します。

Q4.兄弟姉妹や甥・姪に反対されませんか?

A.設計次第でトラブルを防ぐことは可能です。

家族信託では、

  • 配偶者が生きている間は配偶者の生活を最優先
  • その後の承継先を明確に決める

ことができるため、
**「何が、いつ、誰に渡るのか」**をはっきりさせられます。

Q5.費用はどのくらいかかりますか?

A.内容や財産の種類によって異なります。

一般的には、

  • 不動産の数
  • 信託設計の複雑さ
  • 登記の有無

などにより変動します。

ご相談時に、事前に概算費用を明示し、
ご納得いただいた上で進めますのでご安心ください。

Q6.家族信託をした後も、内容を変更できますか?

A.一定の条件下で変更可能です。

信託契約の内容によっては、

  • 受託者の変更
  • 承継先の見直し

も可能です。
将来の変化を見据えた設計が重要です。

Q7.相談したら、必ず契約しなければなりませんか?

A.そのようなことは一切ありません。

ご相談では、

  • 家族信託が必要かどうか
  • 他の制度の方が適していないか

を整理することを目的としています。

「今はまだやらない」という判断も、立派な結論です。

 

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