信託契約締結後に引越しをしたときって何か手続きはいるの?

新潟市在住50代男性

数年前に父が委託者、私が受託者となる信託契約を締結しました。
信託財産は自宅不動産と現金。契約当初は名義を変更したり、引き落とし先を変更したりとやるべきことが多く、大変でしたが、今は軌道に乗り順調に管理ができています。父にも認知能力の衰えが見られ、元気だったあの時に契約ができてよかったなと思っています。そんな父が心配で父の家の近くに引っ越したのですが、信託契約時とは住所が変わってしまいました。何かすべきことはあるのでしょうか。

司法書士法人トラスト

ご相談ありがとうございます。
お引越しに伴う信託でやるべきことですね。

信託不動産について

信託契約時に信託登記をしていると思います。「登記事項について変更があったときは、受託者は遅滞なく信託の変更登記を申請しなければならない」と不動産登記法103条で定めされておりますので、住所変更の登記が必要です。

 

信託不動産の住所変更登記はごく一般的な住所変更と同様の申請となります。

この申請を申請すれば、信託目録の「受託者に関する事項欄」の記録に関しては、登記官が職権で変更の登記をしてくれるので、信託目録の変更は必要ありません。(不動産登記法第101条第3号)

 

(登記申請書)

登記の目的 所有権登記名義人住所変更

原因 令和〇年〇月〇日住所移転

変更後の事項 住所

○○県○○市○○○丁目〇番〇号

申請人 ○○県○○市○○○丁目〇番〇号

△△△△

添付情報 登記原因証明情報 会社法人等番号 代理権限証書

 

なお、住所が繋がらない場合、海外からの転居等は上申書、印鑑証明書、登記識別情報通知(登記済権利書)を添えて申請します。

 

住所の他にも、当初の契約内容と変更となることあるかと思います。

例えば受益者連続型の信託契約で当初受益者が死亡し、第2受益者が受益権を取得する場合や、当初受託者が辞任し第2受託者が就任する場合も登記の変更が必要です。

 

 

また、信託契約は長期に渡る契約となる可能性が多く、途中で内容を変更することも十分にあり得ます。そのため、通常契約書には信託内容を途中で変更できるような条項が入っておりますし、記載がない場合は、信託法の定めによるものとされています。

 

なお、信託の変更は信託法第149条にて以下の通り定められております。

 

(関係当事者の合意等)

第百四十九条 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。

 前項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによりすることができる。この場合において、受託者は、第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。

 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意

 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき 受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示

 前二項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める者による受託者に対する意思表示によってすることができる。この場合において、第二号に掲げるときは、受託者は、委託者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。

 受託者の利益を害しないことが明らかであるとき 委託者及び受益者

 信託の目的に反しないこと及び受託者の利益を害しないことが明らかであるとき 受益者

 前三項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 委託者が現に存しない場合においては、第一項及び第三項第一号の規定は適用せず、第二項中「第一号に掲げるときは委託者に対し、第二号に掲げるときは委託者及び受益者に対し」とあるのは、「第二号に掲げるときは、受益者に対し」とする。

 

 

信託法第149条第1項の通り、委託者、受託者、受益者の三者が合意することで信託を変更することができますが、実務上は委託者=受益者となる信託契約がほとんどですので、受益者と受託者の二者で合意することができます。弊所がお手伝いさせていただく契約書のほとんども二者の合意での変更が可能となっております。

 

また、信託法第149条第2項(2)のとおり、「信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき」は受託者の書面による通知により信託の内容を変更することができます。

 

三者の合意での変更となった場合、信託法上は書面で通知することまで求めておりませんが、変更内容を記した書面を準備することが後々のトラブルを避けるためにもふさわしいと思います。私文書、公正証書問いませんが、内容によっては公正証書での作成が必須となることもございますので、信託の内容に変更が生じた場合は、一度専門家に相談されるとよろしいかと思います。

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