委託者死亡後、空き家の3,000万円特別控除は使えない?

横浜市在住50代男性(Mさん)

数年前に父がなくなり、母は新潟で一人暮らしをしています。母が施設に入ろうとするときに、空き家になってしまう実家を息子である私が管理することは遠方のため難しく、母が施設に入居する際には売却するつもりでいます。母がどんな状態であっても売却できた方がいいとお聞きし、私を受託者として家族信託契約を結びました。
しかし、最近になって母の体調が芳しくなく、入退院を繰り返している状態です。
あまり考えたくはありませんが、もしこのまま母に万が一のことがあり、結果的に実家が空き家となって、将来的に売却することになった場合、どのような税金がかかってくるのでしょうか?

司法書士法人トラスト

大変な状況のなか、ご相談いただきありがとうございます。お母様の体調が心配ですね。不動産売却の場合は、譲渡所得税という税金がかかってまいります。この税金には、様々なタイミングで利用できる特例がありますが、要件がありますので満たしていないと通常通りの譲渡所得税がかかります。順を追ってご説明していきますね。

不動産売却にかかる譲渡所得税の計算方法

(1)譲渡所得

まず、譲渡所得を計算します。

譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)

取得費

不動産購入時の購入代金や仲介手数料、相続や遺贈で不動産を取得した場合であっても当初の購入代金を取得費とします。不動産購入時の代金は、当時の売買契約書で確認します。また、相続や遺贈で不動産を取得した場合は、相続登記の費用や登録免許税、不動産取得税なども取得費とすることができます。

※当時の売買契約書を紛失されており、購入代金が不明の場合は、譲渡価額×5%相当額を取得費として算入することができます。

譲渡費用

譲渡時の仲介手数料、印紙代、測量費用、建物解体費用などを譲渡費用として算入することができます。

(2)譲渡所得税

次に譲渡所得に、譲渡所得税率を掛けます。
不動産を短期(5年以内)で保有していたか、長期(5年超)で保有していたかにより、税率は異なります。ご実家の売却となると長期の方が多いのではないかと思います。

長期保有の不動産の場合
所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%

譲渡所得×譲渡所得税率(20.315%)=譲渡所得税

不動産を売却すると、基本的には以上のような計算で算出される譲渡所得税がかかります。

 

 

居住用不動産の3,000万円特別控除

自宅として利用していた居住用不動産(マイホーム)を売却した場合、その際に発生した譲渡所得が最高3,000万円まで非課税になる控除が受けられます。
控除を受ける要件は、売主の居住用の不動産であること、譲渡先が配偶者・直系血族・同族会社ではないこと、前年や前々年にこの控除を使っていないことなどです。売却時に住んでいない物件だったとしても、居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までであれば、この特例が使えます。
この特例は、家族信託を契約しており、受託者の方が売却をした場合にも適用することができます。

空き家の3,000万円特別控除

相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。

一定の要件とは

(1)対象物件の要件

建物:昭和56年5月31日より前に建築された建物であること
区分所有建物ではないこと(マンションは適用外)
被相続人が最後に一人暮らしをしていたこと(同居人がいる場合は適用外)
土地:被相続人の居住用の家屋の敷地用に供されていた土地であること
(広大な敷地内に家屋がある場合、家屋がある部分の土地が対象)

(2)適用対象者

相続または遺贈により(1)の対象物件を取得した個人

(3)処分方法

−耐震リフォームをして売却する
−家屋を取り壊して売却する
−売却した後に、その年の翌年の2月15日までに耐震リフォームまたは家屋の取り壊しをする。買主がこれらを行なった場合も適用となります。(2024年1月1日以降の売買)

(4)期限

相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する

(5)売却代金

1億円以下 1億円を超える部分については通常通りの譲渡所得税が加算される

(6)その他

他の特例を受けていないこと、親族間の売買でないこと

前置きが長くなってしまいましたが、ご相談内容をお聞きすると、お母様に万が一のことがあった場合でご実家を売却された際、この空き家の3,000万円控除が利用出来そうに感じるのですが、家族信託契約を行なっていると、上記(2)の、『相続または遺贈により』という取得原因が異なってまいります。(2022年12月東京国税局文書回答)
そのため、家族信託契約を締結していると、空き家の3,000万円控除は利用できない、といったご回答となります。

 

信託契約を締結する場合に気を付けること

そのため、不動産を売却前提の家族信託契約を締結する際には注意が必要です。
−売却の可能性がある物件について譲渡所得を計算しておく
−売買契約書があるのか
−同居家族がいるのか
−どのタイミングで売却を検討しているのか
−別で遺言を準備する必要があるのか

家族信託契約書だけを作成することは、今はたくさんの書籍が出ていますのでそこまで大変ではないかもしれませんが、起こりうる問題が深刻なものにならないよう総合的にお手伝いさせていただくのが専門家の務めだと思っています。ぜひお早めにご相談ください。

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