私は夫を若い頃に亡くし、子もいなかったので、代わりと言ってはなんですがペットを2匹飼っています。犬と猫一匹ずつでとても仲がいいんですよ。最近私自身に病気が見つかり、この子達のことがとても気がかりになってきました。私にとっては子ども同然なので、私が死んでしまったら財産を引き継いで欲しいですし、そもそもこの子達のお世話はどうなってしまうのかしら、、、
ご相談ありがとうございます。
お引越しに伴う信託でやるべきことですね。つい先日、行列のできる相談所というテレビ番組で、女優の浜辺美波さんが同じようなご相談をされていました。新たな飼い主となる個人や団体との調整は必須ですが、信託契約で解決できるかもしれません。一緒に確認していきましょう。
ペットに直接遺産は遺せません
お客さまや浜辺さんのように、可愛いペットに遺産を遺したいとお考えの方はたくさんいらっしゃると思います。しかし民法3条及び34条の規定により、法律上の権利義務の主体となれるのは、「人」(自然人、法人)に限られますので、遺言によりペットに遺産を遺すということは日本の法律では出来ないことになっています。
従来は、ペットを飼育してもらう代わりに財産を渡すという方法で対処されてきました。
従来の方法と問題点
①負担付遺贈
飼い主が作成した遺言書において、飼い主死亡後にペットのお世話をすることを条件として、飼育費用等を遺贈することです。負担付遺贈は受遺者が放棄をすることができてしまいますので、飼い主亡き後、財産を受け取らないから飼育もしない、という可能性が出てきてしまいます。
②負担付死因贈与契約
①の負担付遺贈が遺言者の一方的な意思表示であることに対し、負担付死因贈与契約は、贈与者(飼い主)と受贈者(ペットを飼育する代わりに財産を受け取る人)の双方において、生前に取り交わす契約となるため①よりは実行可能性が高まります。
①、②いずれにせよ、遺贈や死因贈与が確実に実行されるように、遺言執行者・死因贈与執行者を指定しておく方が良いと思います。ペットを託され財産を受け取った方が、ペットの飼育という義務を履行していなければ、各種執行者が遺贈・死因贈与の撤回を家庭裁判所に申し立てることができます。もっとも、飼い主の相続人も、受遺者・受贈者がペットの飼育をサボっているから遺贈等を撤回するようにと申し立てができるのですが、そんなにペットのお世話に対して目を光らせて熱心な相続人がいるのなら、最初からその方にペットを託せると良いですよね。そのような熱心な方がいないというのが実情なのではないでしょうか。なのでせめてもの見届け人という意味合いで、各種執行者は必要だと考えます。
しかし、執行者は遺贈や死因贈与が完了すれば職務が終わってしまうため、継続的にペットがきちんとお世話をされているかどうかを監督することはできません。またペットの終生飼育費用ためと思い遺贈・贈与した現金預金が本当にペットのために使われているのかどうか分からない、というのが問題として残ります。
ペットのための信託で解決できるかもしれません
委託者:飼い主
受託者:財産管理を行う方
受益者:新たな飼い主
信託監督人
信託の内容:
飼い主がご存命中はご本人がペットと過ごしていただき、飼い主がお亡くなりになり、ペットのお世話ができなくなったら信託を開始する契約とします。信託監督人を設定することにより、①受益者が信託の目的に沿ってペットのお世話をしているか、②信託された財産を受託者がきちんとペットのために支出しているか、を監督することができます。
ただし、この信託においては受益者(新たな飼い主)となる方がいらっしゃるかどうかが鍵となります。
受益者となる団体もゼロではないのですが、信託業法との絡みから、大手金融機関経由(例:プルデンシャル生命保険の生命保険信託・三井住友信託銀行が提供している遺言信託(ペット安心特約)等)の受付となるケースが多いようです。
ペットに遺言で財産を遺すことはできませんが、飼い主亡き後も不自由なく暮らせるように事前に準備することが、わんちゃんねこちゃんにとって何よりの幸せになるのでは思います。お悩みのことがあれば、まずはご相談ください。