配偶者亡き後対策としての家族信託

日本人の平均寿命はご存知でしょうか?
厚生労働省が発表した簡易生命表(令和4年版)によると、男性が81.05年、女性が87.09年となっております。長寿大国日本ですが、70代の後半では男性12%・女性14%、80代後半になると男性35%・女性48%の割合の方が認知症になるというデータが出ているそうです。更に90代の後半ともなると、男性の42%・女性の71%もの割合で認知症が発症するという結果が出ています。
長寿であるが故に、認知症発症のリスクにどのように向き合っていくか、また、老夫婦にとって、先にどちらか一方が亡くなった後、遺された配偶者の生活をどのようにサポートすべきか については、非常に大きな問題です。
今回は、配偶者亡き後対策としての家族信託について司法書士の関にインタビューしました。

 

ご夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、何か問題になることはありますか?
関)一概には言えませんが、遺された配偶者の方も高齢で認知症になっている場合は相続手続きができないという問題があります。遺された配偶者の方に判断能力があれば、相続の観点では何も支障となることはありませんが、最近は相続人が認知症なのでしぶしぶ成年後見制度を利用することになった方が増えているように感じています。2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になるとも推計されておりますので、「相続人が認知症で相続手続きに支障が出る」といったケースは今後も増加し続けるのではないでしょうか。

相続の手続きができないのは困りますね。なにか対策はありますか?
関)よくご相談いただく事例として、以下のような状況の方がいらっしゃいます。

【ご家族の状況】
・夫婦二人暮らし(夫名義の自宅)、別居の子がいる
・妻は現在軽度認知症
・妻の預貯金が少ないので、夫の預貯金で日々の生活費を賄っている
【不安に思っていること】
・私が今後認知症になった場合は口座が凍結してしまうこと
・私が亡くなった後の妻の生活が心配

【希望】
・夫が先に亡くなった後も妻には何不自由なく生活してほしいので、夫の財産は妻に相続させたい

お客様のご希望としては、大きく分けると ①認知症による口座凍結に備えたい ②スムーズな遺産承継を実現したい の2点ですね。
認知症になると口座が凍結してしまうという話はよく耳にされることですのでご存知の方が多いと思いますが、このままの状況ですと、口座凍結に加えて先程述べたように相続手続きができなくなる可能性があります。
相続手続きを行うためには、ご相続人(奥様とお子様)で遺産分割協議をすることになります。その時点で奥様(遺された配偶者)が認知症になっていた場合、遺産分割協議をすることができず、相続手続きを進めることができなくなってしまいます。
そのような状態で相続手続きをするには、成年後見制度を利用するしかありません。ですが、司法書士や弁護士などの専門職が後見人となった場合は、報酬が発生してしまいます。
報酬額はご本人の財産額によって異なりますが、月2~6万円となります。日本の成年後見制度は、当初の目的(例:相続手続き)を達成したからといって途中で制度の利用をやめることはできませんので、ご本人の判断能力が回復するかお亡くなりになるまで後見人の職務は続きます。成年後見制度を10年間利用し、報酬額が月4万円だった場合、10年間で480万円、月6万円なら720万円を後見人に支払うことになってしまいます。

 

解決策
上記のようなご家族に今後起こり得る問題を回避し、希望を実現するには、受益者連続型の家族信託を締結していただくと良いと思います。

家族信託とは、自分の財産を自分で管理できなくなってしまう事態に備えて、家族などに財産を管理・処分する権限を与えておく制度です。
ご自身の財産は、いったんは奥様にご相続させたいとのことですが、財産の行先を指定するのみでしたら「遺言書」を作成するという手段もございます。ですが、遺言はあくまで亡くなった後の財産の行先について指定しておくものです。生存中は何の効力も生じませんので、生前の財産管理については当然のことながら何ら効力が及ぶものではありませんし、認知症対策として役に立つものでもありません。また、相続した奥様自身が認知症になってしまってた場合、せっかくの財産を自分で管理し消費することができず、塩漬けとなってしまう可能性があります。

一方、家族信託は、自分の財産を自分で管理できなくなってしまう事態に備えて、家族などに財産を管理・処分する権限を与えておく制度です。「遺言」が生前中は効力が発生しないのに対し、生前から財産管理を担うのが「家族信託」です。

家族信託(受益者連続型の信託契約)を活用すると、当初受益者の旦那様がご存命の間は、信託財産は旦那様のために活用します。旦那様亡き後は、信託した財産(受益権)は奥様に引き継がれますので、成年後見制度を利用せずにスムーズな遺産承継を実現することができます。また、財産管理も委託者であるお子さんが引き続き担ってくれますので、奥様の余生も安心です。奥様が亡くなった後、残った信託財産はお子さんへ引き継がれます。

このような信託契約を組むことで、可能な限り成年後見を利用せずに、ご夫婦の安心安全な老後生活と円滑な資産承継を実現することができます。

資産を承継させるだけではなく、その後の財産管理も受託者に担ってもらえると安心ですね。そういった点は遺言では対応しきれない部分ですね。他にも、家族信託でしか実現できないことはありますか?
関)そうですね、信託の設計次第では、遺言では指定することができない二次相続以降(次の承継者)まで指定することができるという点が、遺言とは異なります。

例えば、以下のようなご家族がいらっしゃったとします。

パターン1
・お子様のいらっしゃらないご夫婦
・夫の甥がよく面倒をみてくれている
・自分(夫)の財産は、妻が存命の間は妻のために使ってほしいが、自分も妻も亡くなったら、最終的に遺産は面倒をみてくれている自分の甥に渡したい

パターン2
・夫は前妻とは死別しており、熟年再婚した
・前妻との子はいるが、後妻との子はいない
・自分(夫)の財産は、妻が存命の間は妻のために使ってほしいが、自分も妻も亡くなったら、最終的に遺産は自分の子に渡したい

どちらのご家族も、自分が亡くなった後、いったんは遺された配偶者に遺産を引継ぎたいが、遺された配偶者も亡くなったら別の人(遺された配偶者の相続人ではない人)に遺産を引継ぎたいというご希望があるようです。ご自身が最終的に財産を引継ぎたい人が、遺された配偶者の相続人にあたるのであれば、通常の相続でもその方に遺産が渡りますが、上記の2ケースですと、旦那様が最終的に財産を残したいと考えている方は、奥様のご相続人ではありませんので、対策を講じなければ希望のとおりの遺産承継を実現させることは出来ません。(旦那様→奥様の順で亡くなった場合)

遺言書で財産の行き先を指定することができますが、指定できるのは一世代まで(自分の財産を次に誰に渡すかのみ)です。遺言書が作成できる状態であれば、奥様にも遺言書を書いていただくことも一つの手段ではありますが、遺言は奥様の意思次第ですので、作成した後知らない間に書き替えられてしまったり、旦那様が亡くなった後に撤回されてしまうことも考えられますので、確実にご希望の方に財産が渡るという保証はありません。

 

解決策
上記のようなご家族の希望を実現するには、こちらも受益者連続型の家族信託を締結していただくとご希望通りの遺産承継を実現することができます。

家族信託とは、信頼できる方に財産を託し、管理してもらう制度ですが、遺言のような機能を持たせることもできます。そして、信託の設計次第では、遺言では指定することができない二次相続以降まで指定することができます。
奥様の遺言がなくても、『旦那様→奥様→甥御さん(又は前妻との子)』という財産の流れを作ることができます。

以下の記事にも記載しておりますので、よろしければご覧ください。
https://trust-shintaku.com/soudan-tochi-syoukei/

家族信託は遺言のような機能を一部有してはいますが、全く別の制度です。
財産の引継ぎ先だけ決めておきたい方は遺言書だけで十分でしょうし、財産の引継ぎ先を次の次の世代まで決めておきたい、かつ生前の財産管理も担える権限を与えておきたいという方の場合は、家族信託がおすすめです。

それぞれのご事情によって、選ぶ選択も異なってくるかと思います。
遺言、家族信託などの生前対策全般は弊所でご相談可能ですので、生前対策でお悩みの方は一度ご相談ください。

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