帰属権利者を指定しなかった信託はどう扱われる?

質問:埼玉県にお住まいの方

数年前に父が家族信託を組み、私(長女)が受託者として父の財産を管理しています。信託契約書には『父の死亡により信託終了』と書かれていますが、信託終了後の財産を誰に渡すか(帰属権利者)までは決めていません。

当時は『信託には遺言のような機能もある』と説明を受けましたが、父が元気なうちに認知症への備えを優先したかったので、とにかく管理を始めることが第一でした。

今になって、信託が終了した後の財産をどう分けたらよいのか、悩んでいます。父は遺言を残しておらず、信託財産は遺産分割協議で処理してもよいのでしょうか?」

回答:司法書士法人トラスト

ご相談ありがとうございます。

他にもこのようなご相談をいただくことがよくあります。
ご家族の介護や認知症対策をきっかけに、まずは「今必要なこと」だけに集中して信託をスタートさせたという方は少なくありません。
私たちも日々の業務の中で、将来のことまで思い描くのが難しい状況にあることを実感しています。特に高齢の親御さんの介護や、相続に向けた話し合いが進まない中で、信託の設計に悩まれるご家族の姿は、本当によく目にします。

そのような中で、信託の終了時に不動産をどうするのか、つまり「誰に帰属させるのか」について明確に決めていないケースも少なくありません。

では、信託契約書で帰属権利者を定めていなかった場合、終了時にその信託財産は誰のものになるのでしょうか?

 


◆ 信託の基本構造と「帰属権利者」とは?

信託は、委託者(この場合はお父様)が受託者(ご相談者様)に財産の管理や処分を託す制度です。
信託が終了した際、信託財産を受け取る人物を「帰属権利者」と呼び、信託契約であらかじめ指定することができます。


◆ 帰属権利者が指定されていない場合の取り扱い【信託法第91条】

信託契約に帰属権利者が明示されておらず、その後も特定できない場合、信託法に次のような定めがあります:

信託法第182条第2項
 信託行為に残余財産受益者若しくは帰属権利者(以下この項において「残余財産受益者等」と総称する。)の指定に関する定めがない場合又は信託行為の定めにより残余財産受益者等として指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合には、信託行為に委託者又はその相続人その他の一般承継人を帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなす。

つまり、お父様が亡くなった時点で信託が終了し、その信託財産は相続人に帰属する≒相続財産となるという扱いになります。


◆ 「信託には遺言的機能がある」は本当。ただし…

お客様のご認識通り、信託には遺言と似た役割(死後の財産の帰属先を指定する機能)があります。実際、遺言の代用として信託を活用することもあります。

しかし、それは信託契約書に「帰属権利者」を明確に指定した場合に限られます
今回のように「そこまで考えが及ばなかった」「認知症対策を優先した」という事情があると、遺言的な効果は生じません

したがって、信託終了後の財産は「遺産」として扱われ、遺言がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります(民法第907条)。


◆ 実務の対応例と注意点

実務での流れ:

  1. 信託契約終了(委託者の死亡等)

  2. 帰属権利者が不在 → 信託法第182条により相続人に帰属

  3. 相続人全員で遺産分割協議 → 財産の分配方法を決定

  4. 財産の名義変更や登記・金融機関手続き

注意点:

  • 信託の残余財産に関して、税務上は相続税の対象となります

  • 受託者の職務は信託終了とともに終了するため、以降の管理は相続人全体の責任となります


◆ まとめ

信託契約書に帰属権利者の記載がなく、遺言もない場合でも、信託法第182条により、信託財産は委託者の相続人に帰属します。
これは、結果的に「信託終了後は遺産になる」という形で処理できるということを意味し、遺産分割協議での調整が可能です。また、信託した財産と信託していない財産をまとめて帰属先を決めたいというケースでは、信託契約書と遺言公正証書を同時に作成することをお勧めすることもあります。

信託を利用した相続対策では、「認知症対策としての管理」と「死後の帰属先(遺言的機能)」の両方を意識して契約を設計することが重要です。

お客様ごとに状況や財産の帰属先に対する考え方が異なるものだと思います。司法書士法人トラストではオーダーメイドで生前対策を設計させていただいております。お気軽にご相談ください。

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